「現代マネジメント研究」第2回 尾関健治氏 講義

2022年度 中部学院大学・シティカレッジ関・各務原 公開講座

第2回『関市の「いま」と「これから」』

関市長
尾関 健治 氏

講演する尾関健治市長 講演する尾関健治市長

 今年度の「現代マネジメント研究」第2回の公開講座が5月16日、関キャンパスで催され、関市長の尾関健治氏が講演しました。同講座は各界のトップリーダーを講師に招き、グローバルな視点とマネジメント能力を持つ人材の育成を目的に開催しています。教育学部、人間福祉学部、短期大学部の学生や聴講を申し込んだ一般市民ら約180人が参加しました。

 尾関市長は関市議2期を経て2011(平成23)年に市長に初当選し、現在は3期目。スライドを上映しながら、政治理念や市長としての10年余の取り組みを紹介。産業、観光、教育、文化など多岐に渡って関市の現在とこれから目指す市政の姿を熱っぽく語りました。

現代マネジメント研究の講義風景 現代マネジメント研究の講義風景

 尾関市長が市長になると決めたのは高校生の時だそうです。当時起きた株取引に絡む贈収賄事件「リクルート事件」を例に挙げ、「お金と政治のゆがんだ関係に憤りを覚えた。政治家になり、愛する関市のために働きたいと思った」と当時を振り返りました。政治理念として市長は3つのキーワードを挙げました。それは①自立と自律②多様性③協働—の3つです。この理念に基づいて市政に取り組み、関市の第5次総合計画のスローガン『「産業」を鍛え、「学び」を伸ばし、「文化」を磨き、未来を切り拓く「協働」のまち』を紹介しました。鍛え、伸ばし、磨きーこの言葉は刃物の街を意識したと言います。就任時から毎年、3000人の市民アンケートを実施し、満足度の数値を「せきのまちづくり通信簿」として図表にし、進ちょく状況を公表しています。

 産業では、地元企業の魅力を発信するビジネス展を開催して商談やビジネスマッチングにつなげています。関市の「工場参観日」を開催し、 市民に参加してもらうことで地元愛を養い、就業者の拡大を目指しています。関市は製造業者数が県内市町村でも2番目に多いのが特徴ですが、Seki-Biz(関市ビジネスサポートセンター)を開設し、雇用・人材の確保に取り組んでいます。


 観光では、刃物ミュージアム回廊を整備。「せきてらす」や刃物会館、フェザーミュージアム、関鍛冶伝承館などを回廊としてつなぎ刃物産業と関市の歴史・文化をアピールしています。新型コロナ禍の影響がありながらも、2021年(令和3年)度は約5万5000人が来場しました。商店街には「本町BASE」を開設してシェアキッチンやチャレンジショップを備え、街の賑わいづくりに取り組んでいます。観光をテーマに中部学院大学と関市観光協会は連携協定を結び、学生がフィールドワークやSNSの情報発信で協力しています。 教育では、郷土学習で関市の子供たちに郷土のことを知ってもらうため、日本刀鍛錬体験や小瀬鵜飼見学を授業に導入。グローバルな世界を知るため中学生海外研修を実施し、中学生リーダー養成研修も夏休みを利用して取り組んでいます。「STEAM教育」と名付けて、科学、技術、工学、数学などプログラミング教育、理科算数のコンテストも実施しています。 文化では、「鬼滅の刃」「スターウオーズ」など映画とのコラボレーションで刀剣の魅力をアピール。井村屋のあずきバーと刀の硬さを宣伝する話題づくりをしたり、酒蔵のない関市が「どぶろく特区」に名乗りを上げ、オリジナルのどぶろくや地酒を売り出そうと試みています。

 重点施策に掲げた「協働」では地域委員会を各小学校単位で作り、上之保地区を皮切りに14委員会を設置しました。尾関市長は「市民の1%が街に関心を持ち、行動してもらえれば街は変わるはず」と強調。地域委員会には自治会、NPO法人、各種ボランティア団体、消防団、老人クラブなどが参加しています。 このほか防災では2020(平成30年)7月の豪雨災害で甚大な被害があった上之保地区を挙げ、中部学院大学の学生や教職員ら有志が被災者を訪問して聞き取り調査したことに感謝。LGBTの取り組みにも触れ、市独自のパートナーシップ制度や結婚支援制度、中学校の制服選択などを紹介しました。
 最後に、尾関市長は出口治明・立命館アジア太平洋学長の言葉「人・本・旅」を学生たちに紹介。「学生の皆さんには、人と会い、本を読み、旅に出てほしい。私も大学時代にサークル合宿で台湾を旅し、台中から台北まで歩いたことがあるが、30年過ぎた今でも思い出深い。皆さんもそうした意識を持ち、人との出会い、本を読むこと、旅することを大切にしてください」と学生にエールを送った。

学生時代の思い出を語る尾関市長 学生時代の思い出を語る尾関市長
「せきのまちづくり通信簿」をスライドで紹介する尾関市長 「せきのまちづくり通信簿」をスライドで紹介する尾関市長
講義に聞き入り、熱心にメモを取る学生たち 講義に聞き入り、熱心にメモを取る学生たち

                                                                                    (文責:碓井 洋  写真:野口晃一郎)

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