2024.06.10
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「現代マネジメント研究」第5回 村瀬幸雄氏 講義
2024年度 中部学院大学・シティカレッジ関・各務原 公開講座
第5回『地域と金融の未来~十六FGの取り組み~』
十六フィナンシャルグループ、十六銀行会長
村瀬 幸雄氏
「現代マネジメント研究」第5回の公開講座は6月10日に開講し、十六フィナンシャルグループ会長、十六銀行会長の村瀬幸雄氏が登壇。フィナンシャルグループが目指す金融の未来、地銀として新たな支店のプラットホームづくり、地域の幸福度を増す取り組みなどについて熱く語り、出席した学生や一般市民ら約140人が耳を傾けた。
十六銀行は2021年にフィナンシャルグループを設立し、持ち株会社の体制強化を図っている。その狙いについて村瀬氏は「マイクロソフトを設立したビル・ゲイツはすでに三十年前、Banking(銀行機能)は必要だがBank(銀行)は必要ないと発言していた。その言葉通り、既存の金融機関は多すぎると言われ、他方でイオン銀行やソニー銀行など他業種からの新規参入が相次いでいる。楽天など携帯電話大手三社も通信ではなく、金融で稼ぐ方針を打ち出し、証券会社とも提携強化を図るなど金融を軸とした経済圏づくりを急いでいる。こうした競争激化の中で地銀も持ち株会社体制によってグループの総合力を発揮する形が主流になりつつある」と説明。「従来の支店のように預金、貸し出し、為替業務を行うだけでなく、新たな支店業務のプラットホームを作り、全く新しい領域に事業を展開したい」と述べた。
十六銀行の行内には明治の創業期に銀行家・実業家の渋沢栄一から送られた言葉「順理則裕」 (じゅんりそくゆう)の額が飾ってある。これは理に従えば裕(ゆたか)なりの意味。同行はこの言葉通り、銀行業務を通じて地域密着、地域貢献の姿勢を貫いてきた。村瀬氏は「初代の渡辺甚吉が頭取になったのは21歳の時で学生の皆さんと同じ世代。江戸時代にも両替商はあったが、銀行の仕事はなかなか世間に理解されず、明治の銀行はいわばベンチャー企業だった」と現代との共通性も指摘した。
フィナンシャルグループの新たな展開としては「NOBUNAGAキャピタルビレッジ」と「カンダまちおこし」を例に挙げた。「NOBUNAGA」では電動キックボードのサービスを提供する「LUUP(ループ)」や保育園留学をキャッチフレーズに都会から家族を受け入れる美濃市の「キッチハイク」などスタートアップ企業を紹介。「カンダまちおこし」では、新型コロナ禍で飛騨牛の価格が暴落した際、飛騨牛を買い支えるプロジェクトとして飛騨の金融機関とともにクラウドファンディングを行い、1万人、1億円を達成したと紹介した。
また国連の幸福度ランキングに触れ、「ランキングを見ると日本は2024年度で51位と極めて低い。一人当たりの国民総生産や健康寿命の項目は高いが、人生の選択自由度や他者への寛容性は低い。北欧と比べても政治家や経営者など管理的ポストの女性の割合が日本は少なく、ジェンダーギャップの解消も必要」と指摘。岐阜、愛知などの地域の成長と豊かさを実現するために①東京と比べても遜色のない仕事や給与があること②教育水準があり、子育てができること③文化や芸術に触れられることーを掲げ、その実現のために地元財界としても努力していく姿勢を示した。
金融リテラシーとして分散投資、積立投資、NISAの活用などについても分かりやすくアドバイスし、講義の最後に村瀬氏は学生にはなむけの言葉として「これからの長い人生、自分のやりたいことを身につけてください。コツコツとやっていけば必ず素晴らしい人生になる。いい人生にしてください」と温かいエールを送った。
(文責 碓井 洋、 写真 碓井 洋・渡辺 高也 )