「現代マネジメント研究」第2回 宮崎千惠氏 講義

2021年度 中部学院大学・シティカレッジ各務原・関 公開講座

第2回「AYA世代の方々に伝えたいヘルスケア
~自分の体の知識を学び自分の体を守ろう~」

日本産婦人科医会代議員・宮崎千惠婦人クリニック院長
宮崎 千惠 氏

講演する宮崎千惠氏

今年度の「現代マネジメント研究」第2回の公開講座が5月11日、各務原キャンパスで開講されました。同講座は各界のトップリーダーを講師に招き、グローバルな視点とマネジメント能力を持つ人材の育成を目的に開催され、20年近い歴史を誇ります。昨年は新型コロナウィルスの感染予防のため中止しましたが、三密防止や席数を減らすなど万全の対策を施して開講しました。この日は教育学部の学生をはじめ、聴講を希望した市民の皆様を含めて、約100人が出席しました。

講演する宮崎氏

宮崎さんは久留米大学医学部を卒業後、岐阜大学病院、岐阜市民病院の勤務を経て昭和55年(1980年)に婦人クリニックを開院。現在までに1万件を超える出産を手掛けておられます。日本女医会理事、岐阜市医師会性教育委員長、県産婦人科医会会長などを歴任し、青少年の性教育や婦人科系の病気の啓発活動にも積極的に取り組んできました。趣味は6歳から稽古を始めたという日本舞踊で、講演開始前には司会の今井春昭特命教授が宮崎さんの華やかな踊り姿を写真で紹介しました。

講演で宮崎さんは「今日は女性の生理や妊娠の仕組みと避妊、そして性感染症などについて話します。女性に関する話が主体になりますが、むしろ男性にも理解してほしいという気持ちです」と会場全体に呼びかけた。100枚近いパワーポイントのスライドを紹介しながら「産婦人科医の仕事の傍ら、AYA世代の性教育に力を入れています。AYA世代はヤングアダルトの略称で、15歳から30歳代までの思春期と若年世代の頭文字を取った言葉。結婚や出産、子育てを経験する世代の女性にもかかわらず、義務教育で十分な性教育が行われていない」と指摘。「私が岐阜市医師会会長の時に、岐阜市の中学校23校を対象に、医会員で分担して性教育の出前講座を発足させた。今年度からは医師の有志の先生とともに、60校の公立高校や私立学校に出向いて性教育の授業をする計画です」と最近の取り組みを話した。

現代マネジメント研究第2回 宮崎千惠氏講義の様子

宮崎さんは妊娠について「妊娠中期の胎児はプールで泳いでいて水面の友達の話し声が聞こえるように、体内で母親の声が聞こえているという説もある。夫婦喧嘩などの母親のストレスが胎児にも影響するとされ、その後の成長にも影響しかねない」「インターネット社会が進行し、LINEやフェイスブックなどSNSを通じて面白おかしくアダルトビデオなどに接する機会が増えた。その結果、間違った性知識を得る人が増えている」と懸念を述べた。

さらに「性という文字は心という字に生命(いのち)と書くように、非常に神聖なことで、いやらしいものではない」と強調し、また女性ホルモンと性腺機能、月経のリズムと基礎体温の関係などを説明。

中絶については「経済的な理由や仕事の事情、夫婦関係などから出産を望まない場合もある。母体を保護しながら中絶するには、周期メカニズムを正しく知る必要がある」と理解を求めた。具体例として「生理が来ない時は、すでに妊娠2か月目に入っている。例えばエイプリルフールの4月1日にセックスして妊娠したら、中絶は8月のお盆までに行わないと法的に認められず、12月のクリスマスイブには赤ちゃんが生まれる計算をよく理解してほしい」と話した。

会場の参加者の様子

ゼロ歳児や幼児に対する虐待の増加にも触れ、「若い両親が車の中に子供を放置してパチンコをしていて死なせる事件がよくあるが、望まない妊娠によって母親に十分に母性が育まれていない場合、哀しい事態になります。女性には産み時、育て時という時期があり、生物学的に産み時は22,3歳から30歳半ばまで」と述べた。

性感染症の問題については「STI(性感染症)には多くの種類があり、男性に比べて女性のほうに後遺症が残りやすい。梅毒も減る傾向にあったが、最近は外国人由来の感染者が増えている。一番怖いエイズウィルスはかつて不治の病と言われたが、早期に発見すれば治療法はある。日本ではエイズ感染を隠す人が多く、偏見を持たないことが大切」と米国など早期の治療で、先進国のエイズによる死者が減少していることを紹介した。

特に子宮頸がんについて「世界では減少傾向にあるのに、日本は増加しており、特にAYA世代の増加が目立つ」と警鐘を鳴らし、「米国では85%から90%は子宮がん検診を受け、ワクチンも積極的に接種している。日本国内では子宮頸がんに年間1万人が感染し、約3000人が亡くなっている。20代の若い女性ががんで死ぬなんて想像したくない」と女性の命を守るために子宮頸がんワクチン接種の普及を訴えた。

最後に少子高齢化と医療の問題にも触れ、「高齢化が急速に高まる中、社会保障費の拡大が国の財政を圧迫している。婦人科疾患による医療費の増大、女性労働力の経済的損失も大きい。また、女性は閉経とともに女性ホルモンが急激に減少し、高血圧、高脂血症など心血管系疾患が増加するほか、骨粗しょう症になりやすい。骨粗しょう症患者の9割は女性であり、高齢女性は骨折を引き金に寝たきりになるケースも多い。一人一人が自分の健康に留意することが医療費の恒久的な継続にもつながる。皆さんも正しい身体の仕組みを知り、予防の医療知識を学び、自分の体を守ってほしい」と結んだ。

(文責・碓井 洋  写真 林賢一、野口晃一郎)

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