2022.05.30
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「現代マネジメント研究」第3回 田代正美氏 講義
2022年度 中部学院大学・シティカレッジ関・各務原 公開講座
第3回「自ら限界を決めるな」
バローホールディングス代表取締役会長兼社長
田代 正美 氏
今年度の「現代マネジメント研究」第3回の公開講座が5月30日、関キャンパスで催され、バローホールディングス会長兼社長の田代正美氏が講演しました。同講座は各界のトップリーダーを講師に招き、大学生と聴講希望の一般市民が学ぶ公開講座として20年余の歴史を誇ります。今回は教育学部、人間福祉学部、短期大学部の学生や市民ら約150人が参加しました。
田代氏は1994(平成6)年に株式会社バローの社長に就任し、2015(平成27年)年から会長兼社長として経営を指揮。長年にわたりスーパーマーケットの店舗網の拡大に努め、食品製造や物流を自社で行う強固な体制を築き上げました。ドラッグストアやホームセンター、スポーツクラブなど多方面に事業を展開しておられます。
講演では、65歳から剣道を始めて現在は4段の実力であることに触れ、「60歳まで運動は何もしていなかった。65歳で剣道を始めると言ったら皆は無理だと言った。私は最初から難しいことをできないと決めつけるのではなく、できる方法がないかと考えるようにしている」と語りました。11年前の東日本大震災をきっかけに東海道を自分の足で歩いてみようと思い立ち、京都から東京・日本橋まで2年間かけて約490キロを歩いたと言います。「歩くと車で走るだけでは分からない発見がある。東海道を歩いて江戸時代から延々と続いていた商売に、薬問屋と両替商と菜種油問屋があることに気づいた。これは薬と金融とエネルギーで、現代にも通じる」「東海道では静岡県で富士山がよく見える場所は2か所しかなかった。それから富士山にも登ってみた」と旺盛なチャレンジ精神を語りました。
田代氏は若いころ、米国のスーパーマーケット経営を学び、最も利益率の高かったウオルマートの物流システムに注目しました。そこで「物流を制する者が小売りを制する」と考え、物流センターを作ることでバローの店舗網拡大と商品力向上を実現しました。この発想の転換について戦国時代の『美濃を制する者は天下を制する』という言葉を挙げ、「地政学と言うよりも、むしろ織田信長が美濃(関)の刀匠に目を付け、優れた武器・刃物の生産地を抑えることが天下統一につながった」と指摘。自分にとって「天下を制する」のが物流だったと振り返りました。
経営者に必要な考え方にも触れ、「できない理由として世間では人材がいない、資金がない、地域が限られているーなどと言う。そうした条件は時代が変わり、物のとらえ方が変わればマイナスはプラスに転化する。知識過多で見るとプラスかマイナスか見えない時があるが、プラスとマイナスは紙一重だ」と述べました。
人材育成については「今の時代は短期間ですぐ使える人材を作ろうとする。経済アナリストは日本の終身雇用制を否定するが、人材は短期間では育たない。人材を育てるには10年、20年、30年の経験が必要だ」「センスとスキルという言葉がある。スキルは教えられるが、センスは教えられない。スキル重視の知識だけあっても、善悪の区別ができなければ情報に振り回される。スキルよりセンスを磨くことが大事」と力説しました。
最後に「勇気」と「原点に返る」ことの大切さについて「バローとはラテン語で『勇気ある者』の意味。正しいこと、間違いだということを言えるのが勇気だ。失敗した時、勇気がないと撤退もできない。トップは知識と勇気がなければ正しい判断はできない」と語り、バローの原点となるスローガン「創造、先取り、挑戦」を紹介。「皆さんもこれから自分の原点は何かを作ってほしい。勇気とは何か、原点とはなにか。今は答えが出ないだろうが、考え続けていくことが大事。そのスタートを切る原点が大学だと思う。勇気を持ち、原点を作ってほしい。自分で限界を決める必要はない。限界は世間が決めてくれるものだ」と熱い言葉で講義を結び、学生にエールを送りました。
(文責:碓井 洋 写真:野口晃一郎)