2023.06.12
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「現代マネジメント研究」第6回 有賀信彦氏 講義
2023年度 中部学院大学・シティカレッジ関・各務原公開講座
第6回 「罠 新聞記者の情報の活かし方」
中日新聞岐阜支社長
有賀 信彦 氏
第6回「現代マネジメント研究」は6月12日、中日新聞岐阜支社長の有賀信彦氏を招いて開かれ、学生と一般市民ら約110人が参加。有賀氏は「ニュースの本質は『驚き』であり、『驚き』とは秘密の暴露。情報がある人には情報が集まる」と述べ、新聞記者が隠されたニュースをどう聞き出し、記事にするかを解説した。
有賀氏は1988年に中日新聞社に入社。主に名古屋本社社会部に在籍し、東京本社社会部では司法記者として東京地検特捜部や東京地裁を担当した。英国ロンドンに三年間赴任し、ヨーロッパ総局長として当時のロンドン五輪やウイリアム王子の結婚式などを取材した。
有賀氏は「ニュースとは何かというと、それは驚き」と切り出し、「学生時代の自分もそうだったが、一方的に話を聞いていると眠くなる。一問一答のクイズ形式で講義を進めたい」と提案。「新聞記者が秘密を聞き出してニュースにすることが特ダネ。なぜ特ダネが重要か分かりますか」と質問し、①新聞が売れるから②最も早いニュースだから③会社から評価されるからーの三択で挙手を求めた。正解は②の最も早いニュースだから。
十年ほど前に取材した名古屋市営地下鉄談合事件を取り上げ、「大手ゼネコンが名古屋地検の捜査対象になり、その情報に詳しい男性が大阪にいた。男性に名古屋に来てもらい取材することになったが、男性は妻に東京に行ったことにしてあり、土産の菓子が必要だった」と説明。妻との約束で「鳩サブレ—」を買う必要があったため、有賀氏は一計を案じ、会議のために東京にいたゼネコン役員に菓子を買ってきてもらうよう頼んだという。
有賀氏は「逮捕されるかもしれないゼネコン役員がなぜ『敵』である新聞記者に協力してくれたか」と学生に質問。スライドで①情報提供するとお金がもらえるから②情報を持っているから③協力すれば新聞社が自分の会社を批判しないからーの三択を示した。正解は②の情報を持っているから。「情報がある人には情報が集まる」というキーワードをスライドで示し、ゼネコン役員も『敵』である新聞記者から得られる情報に期待して協力してくれたと話した。
ロンドン五輪の話では、英国選手が金メダルを獲得した際の地元新聞の扱いを質問。①号外②新聞の真ん中の面に小さく③1面トップーの三択を示し、正解は②の新聞の真ん中の面に小さく。
日本では金メダルを獲得すると新聞は号外を出し、朝刊も1面トップ記事の扱い。この違いについて有賀氏は「英国人にとって五輪開催は特別なものではない。欧州の運動会のようなもの。英国人がノーベル賞を取っても新聞の扱いは小さい」「日本や中国、韓国などアジア各国は五輪やノーベル賞を大きく扱うが、欧米はそれほどでもない」と指摘し、背景に日本などアジアの「抜きがたい欧米コンプレックスがあるのではないか」とした。
講義の中で有賀氏は「情報がある人には情報が集まる」というキーワードを強調し「学生の皆さんは自分が何も情報を持っていないと思うかもしれないが、情報はギブアンドテイク。相手にこの人と話したい、何か得をしたとか、楽しかった、また会いたいと思わせることが出来れば相手も情報を出す」とノウハウを紹介。「そのためには普段から自分自身を冷静に見つめ、自分に話せるものが何かを自覚しておくことが大切」と語った。
会場の学生からは「口が堅い人から新聞記者が情報を引き出す秘訣は」との質問があった。有賀氏は「取材する相手のことを事前によく調べて話をすること。そうすれば相手にも熱意が伝わり、関心を持ってくれる」と答えていた。
(文責 碓井 洋 写真 林 賢一 渡辺 高也)